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エレクトロケミカルマイグレーション現象について

エレクトロケミカルマイグレーション現象とは

エレクトロケミカルマイグレーション現象とは、プリント基板等で本来良好な導体間の絶縁特性が、導体から溶出する金属イオンが導体間に析出することにより低下する現象です。
この電気化学的作用は、温湿度雰囲気にて導体間に電圧が印加されることで促進されます。
絶縁物中の不純物イオンが影響する場合もあります。

エレクトロケミカルマイグレーション現象とは

信頼性試験の必要性

プリント基板等でマイグレーションが発生すると、最悪の場合は回路パターンのショートを引き起こします。
その結果、部品の損傷(製品の損傷)となり場合によっては多大な損害・損失を生じることもあるため、新素材、および新製品の研究段階におけるプリント基板等の信頼性評価試験の中でも重要な評価項目とされています。

一般的な試験サンプル(くし型パターン)

一般的な試験サンプル(くし型パターン)

劣化時間(tr)との関係
・電界の影響
tr =keE-n
・温度の影響:
tr = kT exp(⊿Q/kb T)

Ke、kT、 kh、mおよびnは定数
Eは電界強度(V/mm)
Tは絶対温度
Hは湿度(%)
⊿Qは活性化エネルギー

絶縁劣化の発生図

近年の業界動向とマイグレーション現象の関係

実装技術の高密度化

  • 回路パターンのファインピッチ化
  • 実装技術の改革 ⇒ IVH(BVH)・部品内蔵基板・高密度半導体パッケージング
    (TSOP,QFP,BGA,CSP,SiP等)

IVH(BVH):層内接続ホール

IVH(BVH):層内接続ホール

髙密度半導体パッケージング

髙密度半導体パッケージング

部品内臓基盤(LSI・受動部品)

部品内臓基盤(LSI・受動部品)

* 高密度化は配線パターンや電極間が接近して電界強度が増加することになるのでマイグレーション現象が発生しやすい。(100V/1mm=5V/50um)

*環境問題対策・性能改善・コスト競争のため新素材の採用や製造工程の見直しが進む

  • RoHS/WEEEへの対応 ⇒ 素材や薬品類の変更
  • 小型・軽量・高機能・省エネ・低コスト ⇒ 新実装技術・新製造技術
  • 試作品の信頼性評価
  • 製造ロット毎の品質・信頼性保証

主な評価例

  • 2層/3層CCL COF アンダーフィル剤
  • 半導体パッケージ用基板
  • ソルダーレジスト剤
  • 導電性ペースト/インク/接着剤
  • 透明電極
  • ハロゲンフリー基板 FR-4
  • 鉛フリー関連 はんだ メッキ フラックス

主な関連規格

下記は、JIEP発行:イオンマイグレーション評価方法等から抜粋。

JIS Z 3824 ソルダーペーストの評価
JIS Z 3197 はんだ付用フラックス試験方法
ISO 9455-17 クリーム半田
JIS-C60068-2 温湿度安定試験
IEC 60068-2-3/67 同上
JPCA ET02~04 同上
JIS C6008-2-381 温湿度サイクル試験
IEC 60068-2-38 同上
JPCA ET05~07 同上
IPC TM650 2.6.3E 同上
JIS C 60068-2-38 不飽和加圧水蒸気試験(HAST)
IEC 6068-2-66 同上
JPCA ET08 同上
EIA/JESD22-A110 同上
IPC TM650.2.3.16 同上
JIS C 60068-2-28 結露サイクル試験
JPCA ET09 同上