エレクトロケミカルマイグレーション試験手順と注意点
1. 全般的な注意事項・事前準備
JPCA-ET01及びエレクトロケミカルマイグレーション評価方法(JIEP2007年9月発行)を熟読する。
- 試験条件・サンプルの取り扱いは十分ユーザーに確認してから決定する。
- 試験槽は、事前に以下の準備・確認をしておくこと。
*前回使用の水は使用しないで交換すること。
*水(脱イオン水)の抵抗率は、0.5MΩ/cm以上であること。
*ウイックは、新品に交換すること。
*試験槽の中には、試料及び加湿水に影響を及ぼすような材料を使用しないこと。
*試験槽とテスター(ECM-100)のアースは、確実に接続されていることをDVM等確認する。
(数ボルト以上の電位差がある場合は、テスターを壊す可能性がある。)
*試験槽のガラス製の観測窓・室内灯は、金網等でカバーして本体に接地されていることを確認する。
2. 計測ケーブル接続の注意点・手順
- サンプルの取り扱いは、指サック又は手袋・マスクを使用し、サンプル汚染に注意する。
- サンプル表面は、むやみに触らない。及び清掃は乾いたガーゼでほこり等を払う程度とする。
- 糸はんだのフラックスは、RもしくはRMAタイプを使用する。
- 接続方法・材料(糸はんだ・導電塗料・導電テープ・ピンプローブ等)は、ユーザーと打ち合わせの上決定する。
- サンプルの比熱に合わせたはんだごてを使用する。比熱小:25W程度 比熱大:70W程度
- はんだごての設定温度は300~350℃程度を目安とし、サンプルの比熱に合わせて調節する。
- サンプルははんだ・フラックス飛散対策として、ガーゼ・テフロンシート等でマスキングする。
- サンプル側のはんだ付けポイントに、予備はんだをする。
- コモン分離のサンプルは、コモン間を線材でジャンパーする。(ECM-100の場合。)
- 計測ケーブルをはんだ付けする。はんだ付け部分に応力がかからないように、カプトンテープで補強する等の注意を払うこと。
- 計測ケーブルは、サンプルの表面を横切らないよう布線に注意を払うこと。
*アルコール等の溶剤での清掃はしない。必要に応じてユーザーに確認すること。
3. 試験槽へのサンプルの設置
- サンプルは、試験槽床面に対して垂直になるように設置する。
- サンプルは、ファンの風が流れ易いように設置する。
- サンプルは、試験槽の壁面から50mm以上離して設置する。
- 試験用電気配線材は,結露水がリードを伝わって基板面へ影響を与えないように、引き出し方向およびリードの弛みなどに注意して、布線する。
- 計測ケーブルは、必要に応じて棚板等に固定する。
- 試験槽外の計測ケーブルは、通気口より一旦下げた状態で布線し、その後通気口より上に布線する。こうする事によって、ケーブルを伝わって漏れてきた結露水が、テスターに影響しないようにする。
- 試験槽外の計測ケーブルは、通行の邪魔にならず、容易に人間が触れないようにする。
4. サンプルへの加温・加湿時の注意点
試験槽を常温常湿(25℃50%RH程度)程度に保持した状態でサンプルを投入し、その後
- 1℃/分以下の上昇スピードで加温する。(湿度は、50%RHを維持する。)
ステップモードで上昇する場合は5℃毎に5分程度の安定時間を待ってから上昇する。 - 目的温度(85℃)に到達したら、30~60分程度(試験槽及びサンプルの比熱に比例)その状態を保持する。
- 1%RH/1分以下の上昇スピードで加湿する。
ステップモードで上昇する場合は、5%毎に5分程度の安定時間を待ってから上昇する。 - 85℃85%RHになってから、30~60分程度(試験槽及びサンプルの比熱に比例)の安定化時間を維持する。
- その後サンプルに通電する。
*温度・湿度と露点温度の関係を以下の表に示す。
サンプルの温度が露点温度以下になってしまったら、サンプルは結露してしまうことになる。
乾球温度℃ | 湿球温度℃ | 相対湿度% | 露点温度℃ |
85 | 68.92 | 50 | 67.5 |
85 | 70.97 | 55 | 69.6 |
85 | 72.89 | 60 | 71.5 |
85 | 74.69 | 65 | 73.2 |
85 | 76.39 | 70 | 74.9 |
85 | 79.53 | 80 | 77.9 |
85 | 80.13 | 82 | 78.4 |
85 | 80.71 | 84 | 79.0 |
85 | 80.99 | 85 | 79.2 |